2021年11月17日水曜日

6502の逆アセンブラを制作する(その3)

 6502の逆アセンブラを制作する過程の紹介の続きです


W65C816ボード


制作過程(6)--- pass2

pass2では再びデータの先頭から1文字ずつ読みながらアセンブルリストを作成し、ListリストとAssembleリストボックスに書き込んでいきます。その書式は次のようです。
Listリストボックスには
 行番号 アドレス オペコード オペランド ラベル ニーモニック オペランド
Assembleリストボックスには
 ラベル ニーモニック オペランド (アセンブラプログラムにかけられる形式です。)

そのアドレスにラベルがついている場合はラベルも表示し、オペランドがアドレスである場合は即値をラベルに置き換えて表示します。
該当する命令がない場合はオペコードを ?-xx- のように表示し、ニーモニック欄はそのアスキーコードを'a'のように表示します。

【ここまでの結果】 ... 06Coding-pass2

制作過程(7)

作成された逆アセンブルリストを保存します。
ListリストはLSTファイルとして、AssembleリストはASMファイルとして保存します。

【ここまでの結果】 ... 07Coding-savefile

制作過程(8)

最後に細部の見直しをして完成です。

【11月18日追加】下の2ファイルは適宜見直して差し替えることがあります。

【完成版】 ... 08Coding-complete  

完成版の中の実行ファイルのみ ... 6502DAsmWin

最後に

10年ほど前に制作した6800用の逆アセンブラの制作過程をほとんど忘れてしまっていたので、それを復習するためもあって今回、6502の逆アセンブラの制作に取り組んでみました。
自分の場合は、ソースが公開されていてもあまりに長いとなかなか読み切れないことが多いので、いくつかに分割して紹介してみましたがどうだったでしょうか。

手持ちに6502のバイナリがないので十分に動作確認ができてはいないのですが、とりあえずelectrelicさんのUniversal Monitor 6502版が正常に逆アセンブルできることは確認してあります。

6502の命令コードの解釈やその他の誤り・勘違いなどがありましたらお知らせいただけるとありがたいです。






 

6502の逆アセンブラを制作する(その2)

 6502の逆アセンブラを制作する過程の紹介の続きです


W65C816ボード

制作過程(5)--- pass1

いよいよここからが逆アセンブラの本体作成となりますが、まず検討すべきは命令の分類です。RockwellのデータシートによるとR65C02の命令は次の16通りに分類できるようです。

 0:(no opcode)
 1:Absolute 1:a
 2:Absolute Indexed Indirect 2:(a,x)
 3:Absolute Indexed with X 3:a,x
 4:Absolute Indexed with Y 4:a,y
 5:Absolute Indirect 5:(a)
 6:Accumulator 6:A
 7:Immediate 7:#
 8:Implied 8:i
 9:Program Counter Relative  9:r
10:Zero page Relative 10:zp,r
11:Zero page 11:zp
12:Zero page Indexed Indirect 12:(zp,x)
13:Zero page Indexed with X 13:zp,x
14:Zero page Indexed with Y 14:zp,y
15:Zero Page Indirect 15:(zp)
16:Zero Page Indirect Indexed with Y 16:(zp),y

これを元にして、オペコード、ニーモニック、命令長、命令タイプの表を作成しました。
それが下に示すファイルR65C02dopcode.hです。

         
 
pass1はデータファイルを1文字ずつ読みながら、スキップ範囲指定されていなければR65C02dopcode.hを参照して該当するopcodeを見つけ、そのオペランドがアドレスであったらL_xxxx(xxxxはアドレス)というラベル名でラベルテーブルに格納するという作業を繰り返します。(スキップ範囲指定されている場合は下記の処理をします。)
従って、上記のaやzpはそのアドレスにラベルが付き、rは相対アドレスを絶対アドレスに変換したアドレスにラベルが付くことになります。
該当する命令が存在しない場合はエラーにはせずにそのコードをスキップします。(pass2で処理します。)

スキップ範囲の処理
スキップ範囲に指定したデータの扱いですが、範囲の先頭の1バイトの値がアスキー表示可能($20~$7F)ならその範囲全体をFCC /abc.../のように表示し、そうでない場合はFCB $xx,$yy,$zz,...のように表示します。

【ここまでの結果】 ... 05Coding-pass1

6502の逆アセンブラを制作する(その1)

 6502の逆アセンブラを制作する過程を紹介します

6502CPUには触れたことがなかったのですが、最近W65C02やW65C816用のボードを製作した(2021年5月20日のブログ「W65C816も動作する6502基板を製作してみました」)こともあって、6502のアセンブラプログラミングに取り組んでみようと思っています。

W65C816ボード


必要になるのはアセンブラですが、何しろ全く知識のないCPUですので、まず逆アセンブラを制作することで6502の命令体系に慣れ、それからアセンブラを制作することにしました。

なお、ここで制作するのはオリジナルの6502ではなく、Rockwell のR65C02ですので、オリジナルよりも命令が拡張されています。(オリジナルの6502のデータシートが入手できなかったため)

完成した逆アセンブラの動作画面を紹介します。

R65C02用逆アセンブラ

以前制作した6800や6809用の逆アセンブラをベースにしていますので、画面や操作性はほとんど同じです。

この逆アセンブラを制作する過程を順に紹介し、ソースプログラムも公開しようと思いますが、アセンブラや逆アセンブラの構造などについて全く知識のない素人が自己流で制作したものですので、知識のある方から見ると何だこれはと思われるかもしれませんが、私が調べた限りではアセンブラや逆アセンブラを作成するために役立つ情報はほとんど見当たらないようです。(専門家から見ると簡単すぎるので解説する気にもならないということなのでしょう。)

全体の構想

(1)操作性を考えてFormアプリとし、使い慣れているVC++で作成する。

(2)自動的にラベルを付けることができること。

(3)データ部分を指定できること。

(4)変換結果が画面で確認できること。

(5)作成されたアセンブラリストはそのままでアセンブラにかけられること。

上記を目標に制作した結果、上記画面のような構成となりました。


制作の過程

次のような段階で進めていきます。

(1)必要なFormをVisual Studio 2010のC++で作成します。

(2)作成したFormをVisual Studio 2019のC++に移行します。 

(3)処理ファイルを読み込む処理をします。

(4)オプションの処理をします。

  オフセットアドレスやスキップアドレス範囲などの設定をします。

(5)pass1の処理をします。

  ラベルの作成・登録をします。

(6)pass2の処理をします。

  アセンブルリストを作成します。

(7)処理結果を保存する処理をします。

  アセンブルリストを2つの形式(リスト形式、アセンブラ形式)で保存します。

(8)最終確認をして仕上げます。


入力データはファイルメニューから選択するか、あるいは直接ファイル名ボックスにドラッグ&ドロップします。スタートアドレスはBINの場合は$0000に、HEXやMOTの場合はその先頭アドレスになります。オフセットアドレスを設定するとアセンブル開始アドレスを変更することができます。

データ範囲はスキップアドレス範囲として設定します。もちろん複数範囲を指定できます。それらの範囲はFCBあるいはFCC疑似命令となります。

処理結果はListリストボックスやAssemblerリストボックスに表示されますが、変換中も表示させるようにすると時間がかかるので、処理終了後に表示されるように設定しています。

制作過程(1)

まずはFormの作成ですが、最近使用しているVisual Studio 2019(フリー版)ではC++のFormアプリは作成できないようですので、昔使っていたVisual Studio 2010で元のFormを作成し、それを2019で扱うことにします。

必要なメインForm、OffsetInForm、SkipAreaInForm、HelpFormの4つを作ります。

【ここまでの結果】... 01OriginalForm_byVC2010 (OneDriveで公開。以下同様)

制作過程(2)

(1)で作成したものを2019で読み込み、OffsetInForm、SkipAreaInForm、HelpFormをProjectに設定し、さらにメニューの項目を設定します。

【ここまでの結果】 ... 02SetForm_byVC2019

制作過程(3)

逆アセンブルすべきファイルを読み込む処理をします。BINファイルのみでなく、HEX,MOTファイルも読み込めます。

スタートアドレスはBINでは$0000、HEX,MOTでは設定されている先頭アドレスになります。アドレスが不連続の場合はその空白区間は$00になります。

(とりあえず、逆アセンブル実行ボタンを押すと読み込んだデータを表示するようにしてありますが、先頭アドレスから読み込んだ数だけ表示しますので、アドレスが連続していない場合は正常に表示されません。)

【ここまでの結果】 ... 03Coding-inputfile

制作過程(4)

オフセットアドレスやスキップアドレス範囲などのオプションの処理をします。

【ここまでの結果】 ... 04Coding-setoption



2021年11月3日水曜日

6821PIAからアセンブラによるSPI通信でセンサーを制御する

 6809SBCやFM-7からSPI通信でADコンバータMCP3208を制御してみました

これは以前の報告(6809SBCボードやFM-7にArduinoを接続してRTCやLCDを制御 2021年8月24日)の続編です。

実現しようとしているのは6809SBCボードやFM-7にArduinoやRaspberry Piのようなマイコンを接続して、その先の様々なセンサー等を制御することです。そのスタートが上記の報告だったのですが、SBCボードやFM-7に搭載したPIAとArduinoの通信にハードI2Cを用いざるを得なかったために、肝心のセンサー等の制御にソフトI2Cを用いることになり、これでは制御の自由度が狭まってしまっていました。

ということで、PIAとArduino間にSPI通信を用いることができれば、Arduinoに接続したセンサー等をI2C(ハード、ソフト)やSPIで自由に制御できると考えました。

手始めに、Arduinoを仲介せずにPIAにADコンバータMCP3208 を直接接続して制御してみました。写っていませんが前回同様にフラットケーブルの先でPIAと接続しています。


ブレッドボードで実験

 接続図です。


PIAとMCP3208の接続


プログラムを示します。
以前のI2C通信で用いたサブルーチンと同じ名称のものがありますが、その内容は細かいところで異なっているものがあります。またMCP3208のSPI通信に特化したものですので、制御信号は5ビットのみで良く、制御信号の書き込み、データの読み出しはいずれもSCLKをH->Lにするタイミングで行われます。

示したのは6809のFLEX9でのアセンブラプログラムですが、FLEX9特有のサブルーチンは15~18行目の4つ(WARMS, GETCHR, PCRLF, OUTADR)のみです。

   
 

これで、6809SBCやFM-7にマイコンを接続してその先に色々なセンサーをつなぐことができ、マイコンの高級言語(!)でセンサーを自由に制御できることになります。

間にマイコンを挟む場合ですが、ArduinoのようにSPI通信が1回路のみのものでは、センサー側がI2CかSPIかによってPIA側の接続を選ぶことになります。




Raspberry PiやBeaglebone blackのようにSPI通信を2回路持っているものではセンサーとの通信もSPIを使うことができます。





MCP3208の制御に関しては、データシートの他に「最新Raspberry Piで学ぶ電子工作」(金丸隆志著)の解説がとても分かりやすくて大変参考になりました。感謝いたします。